シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


しーんと場が静まり返っている。

ここまで言い切られると感嘆だ。感慨だ。

あたしは思わず、「ブラボー」と叫んでパチパチと手を叩いた。


「これは…クマだね」


目に映る姿はいまだ懐疑的だけれど、あたしの心がクマだと断定した。


残念すぎるイケクマ。


偽者の方が、もっとイケてるように…スマートに上手く立ち振舞うだろう。

わざわざこんなことは口に出さないだろう。


この飾り気ない…不器用にも思える無骨さが、逆に本物だと感じたんだ。


素の…"野生"に感じたんだ。


するりと、玲くんの手があたしの目から取れ、玲くんの大きな溜息が聞こえた。


続けて久遠のぼやきが聞こえた。


「阿呆クサ…」


いつの間にやら、久遠の鎌が消えている。

あんな大きいもの、一体何処に隠したんだろう?


「ある意味…その阿呆さ加減が決め手だな。まさか"本物"がこんなんだとは、偽者も思わなかっただろう。ヘリの中にいた着ぐるみ被った偽者の方が、まだまともだ」


久遠も、あたしと大体同じ理由で、このイケメンがクマ男だと断定したらしい。


「三沢さんが…美形だったなんて…」


玲くんの中でも、イケメン=クマ男になったらしい。


「心を許してたのに…裏切られた気分」


何がショックなんだろう。

美形同士しかわからない何かがあるんだろうか。


縄張り争い?


ずい、と久遠が前に出た。


「クマ、確認しておく。オレと会ったのは…」

「顔をあわせたのは今が初めてだ。お前さんは各務久遠だな。…KANANの美貌オーナーとして有名だ。俺は三沢玲央、よろしくな」


がはははは。

イケクマは豪快に笑う。


毛がないクマ…なんか寂しい。

浅黒いすべすべお肌。

多少ワイルドさはあるけれど、爽やかにも見えるあっさり感が物足りない。


早く生えてこないかな…。

ふさふさしてこないかな。

そうクマをじっと見つめていると、久遠があたしの目の前に移動した。


見えない。

クマの毛の成長を見れないじゃないか。

つんつんと服を引いて訴えたけれど、久遠はどいてくれない。


仕方が無く横からひょっこり顔を出して、クマを見ようとすれば、

今度はそちら側に玲くんが立ってしまった。


双璧に阻まれ、あたしの視界からクマは消えてしまう。