シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


「このプログラムは――」



由香ちゃんが続けて言おうとした時、


「ちょっと待ったッッ!!!

久遠、三沢さんに何してるんだ!!!?」


後ろから、焦った様な玲くんの声がして。


突如現れた玲くんは、飛びつくようにして久遠の鎌に手をかけると、久遠の動きを制した。


「久遠、これがさっき話した"クマ"だ!!!」


「は、はあ良かった、『白き稲妻』のおかげで間一髪…「離せ。これはクマではない。せりが…」


「しかし俺の名前はいつから"クマ"に…「芹霞、"クマ"だよ!!? どう見ても…鬱陶しいほど鬱蒼と黒黒と生い茂る毛の……毛……あ…」


そこで初めて玲くんは、クマ男だと言い張るイケメンを間近で見たようで、口をあんぐりと開けたまま固まった。


そして――


「お前、誰だ!!!?」


庇護するような態度を一変させる。


そうだよね、そうだよね!!!


玲くんはあたし達の味方だ。


「『白き稲妻』まで~!!! 俺は正真正銘…」


「三沢さんは!! 芹霞が毟り取りたくなるくらい、"ふさふさ"が暑苦しい…柿ピー好きな大食らいの野生のクマだ!!! ちょっと渋目はあるみたいだけど、基本!!! そんな綺麗さっぱり後味すっきり爽やかなお兄さんじゃない!!!」


「お前さん…何気に酷いな」 


何だか傷ついているような呟きは玲くんには届いていないらしく、


「お前誰だよ…なんで此処に居る!!! 

いや、それよりも芹霞!!!」


何故か玲くんは、あたしの目を両手で覆って。


「もう見ては駄目だよ?」


耳元で囁かれる玲くんの声。

暗い視界の中で、あたしの心臓が跳ねる。

玲くんが前みたいに…帰ってくれたように思えて、凄く嬉しくて。


「…何でこう芹霞には、次から次へと美形が群がるんだよ…。それじゃなくても不安な時に、余計な心配の種を増やさないでくれよ。心臓もたないよ…」


続けて何をぶつぶつ言っているのか、聞き逃してしまったけれど。


「師匠!!! 見て、このプログラム!!! このハッキング手法…中継をリアルで変えられるという、あの伝説の…ハッカーの王様!!?」

由香ちゃんの興奮交じりの声が聞こえた。