「その薬で――
どちらかを選ぶ権利をやろう」
突如、割り込んできたのは…
ぞくりとする程、威圧的な低い声。
それは初めて耳にする男の声で。
続けて聞こえたのは、派手な爆発音。
周涅が塞いでいた正面の出入り口の瓦礫が、木っ端微塵に吹き飛んだ。
形骸は何一つ残らない、凄まじい力。
誰だ?
こつん、こつん…。
ゆったりとした靴音響かせて、現われたのは――
「兄上!!!!?」
紫の法衣に身を包んだ…
若い男だった。
「皇城…雄黄…?」
警戒心を高めながら、桜が呟く。
あの周涅が片膝を地面につけて、恭しく頭を下げている。
だとすれば。
突如現われたこの男が、実質皇城№1で、誰もが賞賛するという…神童と呼ばれた小猿の兄、皇城雄黄であることには間違いねえんだろう。
こつん、こつん…。
そんなお偉いさんが、何故この場所に?
小猿と同じ藍鉄色の長い髪を、ねじるように1つに束ねて胸に垂らたその様や、女のように柔和に整った顔から、温和な空気を纏っているように錯覚するが…中から滲み出るものが相反している。
安易に触れれば、即座にその指を切り落とされそうな剣呑さ。
小猿が若武者風で初々しい凛々しさを強調させるなら、兄貴は初めから頂点に君臨することが当然というような…支配者特有の傲慢さを感じる。
玲のような柔和な顔で、中身は周涅や酷薄氷皇…というような。
絶対的自信に満ち溢れているんだ。
俺如きでは、その能力が如何なるものか推し量れねえ。
エリート皇城において、TOPとして賞賛されるだけの器はあるんだろう。
こつん、こつん…。
次第にはっきりと見えてくるのは瞳。
柔和に綺麗に整った顔の中、違和感を感じさせるのは・・・即座に射殺しそうな程に鋭い力を持つ、琥珀色の瞳。
小猿とは違う瞳の色。
顔の造形は小猿と似ているけれど、瞳の色が…小猿と違う中身の持ち主だということを主張しているようで。
威圧感は確かに半端なく、確かに支配者の器はあるのだろうけれど…
俺は…その器が、どうしても、賞賛に値するような神々しいものには思えなかった。

