シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「その薬で――

どちらかを選ぶ権利をやろう」



突如、割り込んできたのは…

ぞくりとする程、威圧的な低い声。


それは初めて耳にする男の声で。


続けて聞こえたのは、派手な爆発音。


周涅が塞いでいた正面の出入り口の瓦礫が、木っ端微塵に吹き飛んだ。


形骸は何一つ残らない、凄まじい力。


誰だ?


こつん、こつん…。


ゆったりとした靴音響かせて、現われたのは――


「兄上!!!!?」


紫の法衣に身を包んだ…

若い男だった。



「皇城…雄黄…?」



警戒心を高めながら、桜が呟く。


あの周涅が片膝を地面につけて、恭しく頭を下げている。

だとすれば。


突如現われたこの男が、実質皇城№1で、誰もが賞賛するという…神童と呼ばれた小猿の兄、皇城雄黄であることには間違いねえんだろう。


こつん、こつん…。


そんなお偉いさんが、何故この場所に?


小猿と同じ藍鉄色の長い髪を、ねじるように1つに束ねて胸に垂らたその様や、女のように柔和に整った顔から、温和な空気を纏っているように錯覚するが…中から滲み出るものが相反している。


安易に触れれば、即座にその指を切り落とされそうな剣呑さ。

小猿が若武者風で初々しい凛々しさを強調させるなら、兄貴は初めから頂点に君臨することが当然というような…支配者特有の傲慢さを感じる。

玲のような柔和な顔で、中身は周涅や酷薄氷皇…というような。


絶対的自信に満ち溢れているんだ。


俺如きでは、その能力が如何なるものか推し量れねえ。


エリート皇城において、TOPとして賞賛されるだけの器はあるんだろう。


こつん、こつん…。


次第にはっきりと見えてくるのは瞳。


柔和に綺麗に整った顔の中、違和感を感じさせるのは・・・即座に射殺しそうな程に鋭い力を持つ、琥珀色の瞳。


小猿とは違う瞳の色。


顔の造形は小猿と似ているけれど、瞳の色が…小猿と違う中身の持ち主だということを主張しているようで。


威圧感は確かに半端なく、確かに支配者の器はあるのだろうけれど…


俺は…その器が、どうしても、賞賛に値するような神々しいものには思えなかった。