俺は桜華を思い出す。
あの時も、治療するから見るなと言い放ち、実際学園長の部屋の1室でキスをしていた。
それで俺は、朱貴が七瀬を好きだと言うことが判ったわけだけれど…。
治療…確かに治療だ。
何でそれが唇を重ねる方法なのかは知らないけれど。
だけど…何だ?
どうして…朱貴の気と七瀬の気がまるで1つのもののように…ここまで同調しあう?
気というものは、人間の個性と一緒で、同じというものはありえねえんだ。
なのに…
朱貴と七瀬の気は、どう感じてみても同じで。
「駄目だ、瘴気の影響が思いの他強い」
そう唇を離した朱貴は舌打ちして。
「せめて…薬があれば…!!!」
薬…。
薬って"ジクヨクナール"?
「薬がなければ!!!
紫茉は…壊れるぞ!!!?」
悲痛な朱貴の声に、
「今から取りに帰っても…時間がかかりすぎる!!」
今度は周涅が今度は舌打ちして。
そんな時だった。
何やら考え込んでいた桜が…
上着のポケットをまさぐり始めたのは。
そして――
「薬とは…これか?」
手にしていたのは、錠剤が入った小瓶。
まさしく、あの薬で。
何で桜がそんなものを!!!?
「これを見越していたのか…あの男は」
何だかよく判らねえ言葉を、自嘲気に吐き捨てて。
そして、笑ったんだ。
「形勢逆転だな、周涅。
これを欲しくば、対価を払え。
お前が言い出したこと。
この薬に重大な意味があるというのなら、こちらの望む全ての条件を呑んで貰おう。
この条件呑めねば…この薬を裂岩糸で粉状にして、風に飛ばす」
ああ、これで。
これで緋狭姉も玲も…
助かる!!!!
俺は…ようやく大きな呼吸が出来た。

