「はああああ!!?」
変な声を上げたのは小猿。
「そうだ、それでは…!!!」
慌てたのは桜。
そう、緋狭姉のことも、玲の結婚話も、円満解決の確証が得られてねえのに、向こう優位に七瀬を犠牲にして、俺達の安全のみ保証される…という事態だけは、してはいけねえ最悪なことなんだ。
それならば結局は振り出しに戻っただけで。
これならば…周涅の思惑通りじゃねえか。
「紫茉、戻れ」
そう、叫んだのは朱貴だった。
「行くな、俺の元に戻れ!!!」
悲壮感漂うその顔には、
明確な…七瀬への想いが溢れているというのに――
「すまないな、朱貴。お前も助けに来てくれたのに」
困ったように笑う七瀬には届かない。
気づいてもいない。
朱貴がどんなに身体を張ってまで、七瀬を愛しているのかを。
「煌と桜だけでも無事に逃したい。
あたしは大丈夫。ちゃんと説得するから。
後のことはあたしがちゃ…んと…」
何だ?
七瀬、身体ぐらついていないか?
そんな時だったんだ。
「ぐっ!!!」
七瀬が苦しみの声を出して、前方に倒れ込んだのは。
「紫茉!!!?」
それを両腕に支えたのは近くに居た周涅。
「ぐあああああ!!!」
七瀬は汗を掻きながら苦しんでいて。
「これは…いつもの熱の発作!!!? 朱貴!!!」
周涅は途端表情を変えて朱貴を呼ぶ。
そして朱貴もまた、表情を変えて飛んで来て…
「ああ、いつもの熱「痛い、痛い、痛い、痛いッッ!!!」
自分の身体を抱くようにして、蒼白な顔で悶える七瀬。
そして朱貴は――
「!!!」
七瀬に口付けたんだ。
何でこんな時に…
と思ったけれど、
「これは…治療?」
桜の声。
そう、朱貴の気が、唇を通して七瀬に移動している。
キスではなく…助けているというのか?

