「煌…」
桜が言った。
「緋狭様は、生きねばならぬ女性だ」
そして…柔らかく微笑んだ。
「私達には忘れてはならない恩がある。その慈悲深さに皆救われてきたんだ。見捨てることは…絶対したくない。してはいけないことだ」
俺は…頷いた。
俺達の心は…同じだった。
「周涅」
桜は、周涅に言った。
「その条件を呑もう…」
それで緋狭姉が助かるのなら。
「翠。後のことは頼む」
そう、事後は…俺達は居ないだろうから。
「小猿。お前が証人だ。
何としてでも、緋狭姉を助けてくれ」
俺も笑いながらそう言うと…
「嫌だ、嫌だよ、絶対嫌だよッッ!!! やめろ、やめろよッッ!!! そんなことしても周涅は助けないかも知れないじゃないか!!!」
「小猿…。
だけど…助けてくれるかも知れない」
それは僅かな希望。
「言う通りにしない限り…希望は0だ。時は嫌でも過ぎていく。迷っている時間はねえ」
俺は、意識無く横たわる緋狭姉を見つめた。
緋狭姉に意識があれば、きっと殴り飛ばされるかも知れないけれど。
不肖の弟子達は、緋狭姉を助ける為なら何でもするよ。
例えそれが、仲間と共に進む地獄の道であろうと。
例えそれで、人の道から外れてしまおうと。
――如月煌と名付けよう。
緋狭姉に貰った命、返すよ。
「だから小猿、後のことは…「嫌だ嫌だ、絶対嫌だ!!!」
小猿がわんわんと派手に泣き出してしまった。
酷だよな、判っている。
だけど…
「お前に頼みたい」
それは桜も同じ思いのはずだから。
信用出来るのは、小猿だけだ。

