緋狭姉が…
微かに微笑んだ気がした。
「な!!!?」
それは周涅の虚をついたようで。
俺の肌を伝わるようにして、転げ落ちた血染めの太陽石は、固定されている手首の方へとコロコロと転がり…自由な指がそれを掴む。
俺の手に戻った太陽石。
そのまま俺は、再度顕現させる。
小振りの…偃月刀に。
そして指先で偃月刀を回転させ、
手首の枷を斬ったんだ。
俺にとって、偃月刀を使用した器用な芸当は、緋狭姉との修行で嫌と言う程やらされた。
錘までついた頑丈な手錠をかけられて、ぽいと危険な場所に放置プレイされるのはよくあることで。
生き伸びるためには、偃月刀を器用に使いこなさないといけなかった。
今思えば、緋狭姉との修行は…今の危機に繋がる、必然だったんだな。
いつも必死で判っていなかったけれど。
過去があって今がある。
同じ時間軸の延長上にいると思えば、緋狭姉には助けられてばかりだ。
「…手首から下も固定すべきだったな、周涅。この馬鹿犬は、しぶといんだ」
満足気な緋狭姉の声が聞こえる。
全ての枷を壊した俺を見て、周涅が足を蹴り上げて攻撃してきたが、それを止めたのは、緋狭姉の膝だった。
「させぬ。
これ以上…手出しはさせぬ」
その間に俺は桜の枷を外し、
吃驚仰天という顔で固まる小猿の首を軽く叩く。
「わ、わわわわワンコ、傷!!!」
「あ? こんな程度なんともねえよ。いつもの修行の方がズタボロだ」
「どんな修行してるんだよ、ワンコ…」
口で言えば簡単。
死にそうな修行だ。
とは言わないでおくけれど。

