シンデレラに玻璃の星冠をⅡ



「桜は玲の調理補佐をしていて舌は肥えている。私が金翅鳥(ガルーダ)で犬肉をいい具合に焼いてやろうか? 生だと腹を壊しそうだしな」



ぞわり。


周涅より緋狭姉の方が怖い。


「わ、私は犬肉なんて…」


桜の顔が引き攣っている。



「紅皇――。

何を考えている?」



流石の周涅も、幾分か動じたようで。



「何も? ほらどうした。馬鹿犬を斬ると言ったのは、口だけか? ん?」


煽る緋狭姉。



「さっさと斬れ。

焦らすな」


目茶苦茶に煽ってやがる。


緋狭姉、俺が嫌いなのか?


何だかもう…俺は涙目で。


だけど…判ったんだ。


黒い瞳が俺に向けられたその瞬間。

その瞳が俺に告げたんだ。



多分周涅は気づいていない。

それだけ刹那に行われた、俺だけへのメッセージ。


ならば――。


俺は溜息をついて、力を抜いた。


「判った。早く俺を斬れよ。言っておくけど、俺回復は早いから。肉切ってみれば判ると思うけどさ」


投げやりに言った俺に、小猿の目がまん丸になった。


「わ、ワンコ!!! 何言ってるんだよ!!! 降参すんなよ!!!」


「仕方ねえだろう?

もう――駄目だ」



――諦めるな。



「斬るなら、早く斬れ。周涅」



――チャンスは一瞬。




「……。ならば、斬ってやろう。

望み通り、その身体を。

だが簡単には死なせない」




一閃。



「ワンコ!!!!」

「煌ッッ!!!!?」



肩に突き刺さったまま、

肉を裂くように斜めに移動する偃月刀。


灼熱な痛みが、身体に走る。



――自らの身体で…




そして俺は――



――石に戻せ。



刃に触れた肉を通じて、

太陽石(サンストーン)に戻したんだ。