「桜は玲の調理補佐をしていて舌は肥えている。私が金翅鳥(ガルーダ)で犬肉をいい具合に焼いてやろうか? 生だと腹を壊しそうだしな」
ぞわり。
周涅より緋狭姉の方が怖い。
「わ、私は犬肉なんて…」
桜の顔が引き攣っている。
「紅皇――。
何を考えている?」
流石の周涅も、幾分か動じたようで。
「何も? ほらどうした。馬鹿犬を斬ると言ったのは、口だけか? ん?」
煽る緋狭姉。
「さっさと斬れ。
焦らすな」
目茶苦茶に煽ってやがる。
緋狭姉、俺が嫌いなのか?
何だかもう…俺は涙目で。
だけど…判ったんだ。
黒い瞳が俺に向けられたその瞬間。
その瞳が俺に告げたんだ。
多分周涅は気づいていない。
それだけ刹那に行われた、俺だけへのメッセージ。
ならば――。
俺は溜息をついて、力を抜いた。
「判った。早く俺を斬れよ。言っておくけど、俺回復は早いから。肉切ってみれば判ると思うけどさ」
投げやりに言った俺に、小猿の目がまん丸になった。
「わ、ワンコ!!! 何言ってるんだよ!!! 降参すんなよ!!!」
「仕方ねえだろう?
もう――駄目だ」
――諦めるな。
「斬るなら、早く斬れ。周涅」
――チャンスは一瞬。
「……。ならば、斬ってやろう。
望み通り、その身体を。
だが簡単には死なせない」
一閃。
「ワンコ!!!!」
「煌ッッ!!!!?」
肩に突き刺さったまま、
肉を裂くように斜めに移動する偃月刀。
灼熱な痛みが、身体に走る。
――自らの身体で…
そして俺は――
――石に戻せ。
刃に触れた肉を通じて、
太陽石(サンストーン)に戻したんだ。

