「さあ、紅皇。
選ぶまでもないが…。
残された時間を満喫し、この場で弟子達に生き地獄を見せたくなければ…去れ。
もしそれを拒絶するというのなら。
弟子達を切り刻んでからお前を殺す」
途端、新たなる水の枷が俺の首元に現れて。
それは俺だけではなく、桜もだった。
その凄まじい水圧に、喉が締め付けられていく。
だけど――
俺も桜も声は上げなかった。
道具として…緋狭姉の足を引っ張りたくない…その一念で。
蹲(うずくま)る緋狭姉から、血がどくどくと溢れている。
その顔が苦しげなのは、出血だけの問題じゃねえ。
呪詛。
正体は判らないが、それが緋狭姉の内部から蝕んでいるように思えた。
緋狭姉の気が、弱く揺らいでいるんだ。
「返答がないようだ。
では…本格的に、切り刻むとしよう。
あまりの苦痛に逃れたい本能は、人の心を捨てさせる。
愛だ友情だ…そんな綺麗事は所詮世間知らずの夢想。
凄惨な現実を見るがいい。
弟子達が食らい合う…狂った宴を」
誰が…桜を食うかよ。
勝手に…話を進めるな。
偃月刀。
俺の偃月刀。
俺は、心に念じた。
今まで以上に切に。
「周涅!!!!」
朱貴の声。
「周涅…私は…」
首元の枷の締め付けが強くなり、俺の身体が後方にしなる。
緋狭姉の視線を感じる。
周涅の笑いが聞こえる。
俺は…道具じゃねえ。
道具だった…制裁者(アリス)からは足を洗ったんだ!!!

