俺は、タイルを拳で叩き付ける。
応えたかったんだよ、本当は。
抱きしめたかったんだよ、本当に。
俺の命なんかより、
芹霞の想いを優先すればよかった。
逢えなくなる恐怖より、
一時でも幸福を味わえばよかった。
だけど。
あああああ!!!
何度も何度も――
俺は拳を、タイルに打ち付ける。
拳から流れる血が…まるで俺の心のようで。
苦しい。
苦しい。
再会出来たのに。
芹霞が居るのに。
芹霞が笑顔を見せるのに。
俺は生きていられたのに!!!
俺の記憶がないなんて。
俺が芹霞を愛してきた記憶が…ないなんて!!!
何なんだよ、この結末は!!!
手首につけた布に何度もキスをする。
温もりのないただの布。
濡れて冷えた芹霞の心。
何度も芹霞の柔らかな熱い唇思い出して口付ける。
ずるずると…タイルから崩れ落ちる俺の身体。
どんなに男の身体をしていても、芹霞に意識して貰えなければ意味がない…そんな身体。
俺は…
ふり注ぐシャワーの飛沫を浴びながら、
頭を抱えて祈り続ける。
どうか…どうか。
芹霞が俺を思い出しますように。
――芹霞ちゃあああん!!!
どうか、どうか…。
芹霞が俺から…離れていきませんように。
――可愛いね、僕の従弟は。
「……れ…い…」
俺の目から…涙が零れ落ちた。

