「あち、あちちち!! 師匠も情け容赦なく燃やすな…って、火事になったら…って、は!!? 神崎…ぐげげげ、首絞めるんじゃないっ!!」


あたしは泣きながら全力疾走をして、由香ちゃんに抱きついた。

首に回した手が強すぎたようで、由香ちゃんが半目になった時、


「せりせり!!! 由香を殺すな!!!」


後ろから久遠に言われて我に返る。


「ゴホ…ゴホホホ。はあ…死ぬかと思った。しかし神崎、何でそんなに泣いて…って・・・師匠!!?」


玲くんも泣いていたんだ。


凛ちゃんに取り縋るようにして。


「うわああああ!!!」


堰を切ったかのように、

玲くんの激しい泣き声が響く。


今までの全ての感情を爆発させたかのように。



両膝を地面について、

両腕で凛ちゃんの腰に抱きつくその様は。



まるで罪深き咎人が――


慈愛に満ちた微笑みを見せて、

両手を広げる聖母マリアに…


懺悔しているようにも見えたんだ。



あまりに綺麗で崇高な光景に、

誰一人声をかけることは出来なかった。



あたしは――

玲くんが救いを求めるその対象が、

あたしではなく凛ちゃんだということに…


凄く心が痛んだ。



そして同時に――


凛ちゃんにそこまで心を見せて

泣くことが出来る玲くんが――


凄く羨ましくなった。