久遠が大鎌に顕現して行く手を切り裂き、旭がねじ伏せる。

取り零れを俺が殴り倒す。



中央には芹霞。


決して敵の手に触れさせはしない。


触れていいのは俺だけ。

繋がっていいのは俺の手だけ。


ちらちらと久遠の視線を感じる。


快く思っていないことは判る。

しかしこんな時に何手なんて握っているんだと怒らないのは、少しでも判ってくれているからと思いたい。


俺の心情を。


12年間取り縋ってきた…

子供の駄々だ。


そう思ってくれていいから。



「屋敷に近付くに連れて、数が多くなる。

もう少しの所なのに…」


そう久遠が言った時だった。


「あれは――

紫堂玲!!!?」



此処からはまだ距離はあったけれど。


屋敷から飛び出すように出てきたのは、間違いなく俺の従兄で。


それは――

会いたかった玲で。


「玲く…ん…。

元気になった…」


ぽろぽろ涙を零す。



「よかった…。

やっぱり…あたし…」


俺は――



「玲くーーーんッッッ!!」



俺から手を払った芹霞に。

玲しか映さない熱っぽい瞳に。

赤らめたその顔に。


"女"の表情を見た気がして。


ぞくりとした悪寒を感じた。