「周涅…紫茉と朱貴を解放しろ」
気づけば…
皇城翠が立っていた。
凛とした…研ぎ澄まされた藍鉄色の瞳。
それは静かなる怒りを湛えた…
櫂様にも通じる、覇者の圧感。
彼もまた…
皇城という特殊家系の直系なんだ。
素質がある。
…世間知らずで、無自覚なだけで。
「周涅ちゃんを抑えた気でいるの?」
周涅は動じない。
噛み付かれたままの片手を上に上げ、そのまま大きく振った。
勢いで猿犬が地面に叩き付けられ…その顔を周涅は足で踏み潰した。
ひらひらと…紙に還る。
「これで…小賢しい式は使えなくなったね、翠ちゃん。どんな策があるの、教えてよ?」
時間稼ぎと煌は言ったけれど。
煌を見捨てて逃げれなかった私は、
煌の案に乗じて…
"逆転"させた。
時間稼ぎこそが、"私"の策。
煌が復活する為の。
背を向ければ周涅が即座に動く。
1人では周涅を抑えることが出来ない。
だったら――
2人で相手をすればいい。
それくらい、聖ではなくとも私だって判るんだ。
私が居るのは誰かを死なせる為ではなく、
誰もを死なせない為にある。
私が求めていた強さとは、
守るための強さ。
決して…
誰かを殺す為ではない。

