「あ……ふっ…り…んっ…!!」


舌があたしの舌を追いかける。


捕まったら最後、絡み取られる。

まるで蜘蛛の巣にかかった蝶のように。


凜ちゃんが怖い。

あたしを逃がさない。


まるで男のような、強い力であたしを固定し、どんな抵抗もものともしない。

女の子だから、あたしは噛み付くことはしたくなくて。


そんなあたしの躊躇が、彼女の舌の動きを性急にさせていく。


まるで怒っているかのような荒々しさ。


何故か…涙が零れた。



――…はいなかった。


そこには感情は伴わず。


――…は存在していなかった。


何だろう。



玲くんが…




――君が好きなのは、



玲くんの声があたしの頭を侵蝕して。



――紫堂玲だ。



漆黒色と白色が、頭の中で衝突した。


その衝動に頭が…割れそうに痛い。



――あたしは、



痛いんだ。


やだ。


何!!!?



――……を愛してる!!!



やめて、お願いだから。


やめて!!!



「――ん、凜ッッ!!!


オレの声を聞け、この馬鹿ッッ!!!


がっつくなッッッ!!!!」



憤ったような久遠の声に我に返った。