そして僕は――

目を瞑り、虚数を構成するプログラムを解体していく。


虚数化を命令するものがプログラムである限り、僕が得意とする0と1の世界であるのは変わらない。

ならば…不可能ではない。



「うわ…。久々に…見たけど、凄いや…。見ろよ、蓮。大画面に映っているのが、今師匠が機械を媒介にして成しているプログラムだ」

「動かない紫堂玲の中で…この大画面に流れて映るだけの0と1のプログラムが組まれているのか?」

「そうだよ、師匠の青い光の正体は…こうしたコード変換。これが素早く組まれて、物理的に影響を及ぼす力となるんだ!!!」


命令語は何処だ?

何重にも包まれた、命令語に似せた偽装(フェイク)プログラムの増殖。

剥がしても剥がしても再生する虚数のプログラム。


模倣してやる。


そこまで抵抗するというのなら。


「あ…鐘が鳴ってるね」

「7時だな。久涅が言っていた"記者会見"とやらは行われるんだろうか。久遠様も戻らないというのに」

「どちらにしてもカメラマンが無残な姿になってるのなら」

「由香。久涅は、"約束の地(カナン)"に訪れた半分を連れて消えたんだ。半分はまだ残っている。多分、何人かは屋敷に避難しているはずだ。号令があれば…会見中継は不可能ではない」

「えええ!!? でも電力はないんだし…」

「まあ…そうだな。しかし久涅が電力の消費と惨状の元凶だというのなら、記者会見など出来る状況にはないこと、判っていただろうな」

「会見などハナからする気はなかったのか…」



「ん……」




「どうした、師匠!!!?」

「どうした、紫堂玲!!?」



「急に、"約束の地(カナン)"の虚数の勢力が膨大した」


肌で感じる不快感。



なんだろう。

覚えがある。



「あれ、ボク立ちくらみかな。何だか視界が揺れているようで…」


「違う由香、これは…

――地震……!!!?」


突如建物自体がぐらぐらと大きく揺れた。