「だけど榊兄のわけないよ!!! だって0と1なんて判ってないし、何よりまだ入院しているはずだし」
「そう…だよね…」
じゃあ誰だ?
電脳世界を知れるのは、僕以外に誰がいるんだ?
「それからさ、その警告…ネットに繋がっていない、デフォルト状態で起きたんだよ。そんなコトできるの…師匠以外に誰がいるんだよ!!?」
遠隔操作にて、0と1を言語に変換出来るなんて。
「だけど…その警告通り、確かに電脳世界は危険だ。電脳世界は…虚数に満ちている」
「虚数?」
「うん。0と1以外の、ありえないものが入り混ざり…増殖している。まるで生き物のように、0と1を摂取して…-1となっている。だから二進法が崩れ、僕の力にも変換出来ないし、此の地で由香ちゃんが僕に連絡出来なかったのも…多分…」
そうだ。
電脳世界は…"約束の地(カナン)"と外界を繋ぐ世界。
ヘリからの落下時、僕は此の地でも虚数を感じた。
虚数は、正常な電気…0と1を食らう。
「もしかして…電気の消費量が激しいのは、虚数も関係があるのか」
僕は大画面を睨み付けた。
6時半。
それは…ショッピング街から始まり、遊園地方面に移動し、時計台付近に戻ってきている。
「6時半前後…ショッピング街には何が起きていたんだ?」
「さあ…? ボクはずっと此処にいたし…」
「中継が入ったはずだ」
突如声がして、振り返れば蓮が立っていた。

