「多分、その移動している"何か"のせいで、ここまで電気食っているんだよ。信じられないことだけれど、遊園地全体の消費量以上の電気背負って動いている」
「………」
「思えばさ、"約束の地(カナン)"の電気はおかしいんだよ、師匠。今まで師匠に連絡出来なかっただろ、ボク。外界からは"受け取れる"けれど、外界に発信出来ない。遊園地になった時はこんなんじゃなく、外界同様な普通の状態だったろ?
数日前だって、ボクが蓮にメールしてデータ送って、蓮から返事返ってきて今後を打ち合わせしていたくらいだ。
何か…異常起こっているのか、電脳世界に」
真剣な面差しで、由香ちゃんが僕を見た。
「師匠、警告くれたろ? 電脳世界に気をつけろって」
「――は?」
「――へ?」
僕達は、驚いた顔を見合わせた。
「僕が由香ちゃんにメッセージを送ったのは、ゆんゆんの時で…」
思い出してしまった。
恐怖のゆんゆん…。
「ああ、あのおかげで、師匠を殺さずにすんだよ…って!!! それじゃなくさ、氷皇のデータ消失時、0と1の暗号でボクに警告くれただろう、師匠」
「してないよ、何だよそれ…」
電脳世界に…気をつけろだって?
僕は…記憶が無い。
「はああ!!? でも"タマの声は声優か効果音か"って、そこから始まったぞ!!?」
「僕は、"ジャイ子の本名に謎がある"っていうのしか送ってない」
途端、由香ちゃんがムンクの叫び状態になった。
「じ、じゃあ…それを言ってきたのは誰だよ!!? ボクはてっきり師匠だと思ってたのに!!!」
何で…由香ちゃんとの"取り決め"が外部に漏れる?
「…由香ちゃん。僕との"取り決め"、誰かに言ったかい?」
「いいや、ボクは言ってない。……けど」
由香ちゃんは、眉を八の字に下げた。
「けど?」
「師匠との"取り決め"は、ある種…アニオタの"謎"じゃないか。だからただのアニオタとして…その答えがどうだか、笑いながら聞いたことがある」
「誰に?」
「……兄貴。元気な時の」
榊か。

