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悪夢だった…。

悪夢から覚めた悪夢だった…。


まさか…こんな展開が待っていようとは。


「師匠、師匠!!! 俯せになって突っ伏すなよ。元気出さないと、クサ食べさせられるぞ!!?」


静かに背中を揺すぶられても、僕はもうぐったりとして返事をする気力もなかった。


結局…全部食べさせられた。

皮付きの野菜は無論、正体不明の肉は勿論、異様な匂いを放つ白濁スープまで。


過去紫堂で叩き込まれた礼儀作法というものが身に染みついて、食事は残さず綺麗に食べる…ということが習慣づいていた僕は、もう最後は自棄になって息をしないで呑み込んだ。


凄く達成感はあったけれど…疲労感も強くて。


だけど…寝汗に冷えていた身体は、ぽかぽかとして温かくなり。


まさか…体力回復できるアイテムなどとは考えたくないけれど。


気持ちが悪い…。

今はそのことが僕を苛ませる。


その時。


ばたばたばた…。


大きな足音がして、


「レイく~~~んッッ!!!」


悪魔の声。


僕は反射的に、びくりと身体を震わせた。


「クサッッ!!!

久遠様のクサッッ!!!」


「旭…何だか久遠が臭うみたいじゃないか」


と言いつつ、


「師匠、起き上がっていつもの極上スマイル!!! そのままじゃ…」


「レイく~~~んッッ!!!

クサッッッ!!!」


またもや怪力で、片手だけで僕をベッドから引き剥がした旭。


目の前に突き出された草は――…

酷い悪臭漂うもので。


"しちゅ~"でさえも胸悪い匂いだったというのに、更に凄まじい悪臭を放つ草が、此の世に存在しているなんて。


僕…世間知らずだったね。

世間にはこんな凶器がある。


くらっとくる。