「師匠…。彼は…居るからね?」


それが櫂を指していることだと、僕は悟る。


遠回しなのは…周りを警戒しているのか。

警戒せざるを得ない状況があると?


「うん。助けて貰った。

今……?」


僕はきょろきょろあたりを見渡した。


「帰ってこないんだ、それが…」


僕の足元に…剣があった。


櫂と僕だけしか判らない…始まりの剣。


僕に剣を渡して、窮地に陥ってないだろうか。


櫂、どうした?


会いたい。

櫂に会いたい。


だけど――


セリカトアッテイタラ?


僕は、胸に痛みを覚えて顔を顰めた。



「師匠。体力使いすぎて、身体ボロボロなんだ。兎に角今は、何も考えずに安静にしてて。安静中…って言っても、頭はいいままなんだから、ボク、遠慮無く今までの経緯を説明して、アドバイス貰うつもりだから。結構こっちはこっちで緊急性あるというか…今はまあ、緊急システムに頑張って貰ってるけど…時間の問題で」


緊急システムって…。

本当の緊急中の緊急の為に用意したプログラムを、使用せざるを得ない状況だというのか?


「師匠、もう少しで"来る"と思うけど…効果はあると思うから。多分?」


え?


その時、バタンと大きくドアが開いて。



「レイく~~んッッ!!!」



白いフリルのエプロンをつけた旭が、破顔しながら入ってきた。


手には…スープ皿。

反対の手には、やけに煌めく大きな銀のスプーン。



「旭ね、旭~!!!

"しちゅ~"作ったのッッッ!!!」