気怠い。


頬に貼り付く汗ばんだ髪を掻き上げようとして、僕は手が動かないことに気づいた。


「師匠、悪い!!! 応急処置だ」


気づいたら…僕の四肢はベッドに縛り付けられていて。


「ごめんね、これも外すね…」


そして更に気づいた。


僕の口の中に…布が押し込められていたことに。


「舌噛まないようにって蓮が。ごめんね、今全部外すからね…」


体中…汗が凄い。


頭の中が、まだ夢と現の間を彷徨っているように、ふらふらとする。


「師匠。あのけったいな服は、遠慮無く憎悪を込めてビリビリ裂かせて貰ったからね。

久遠の服だけれど、しかも白いシャツばかりしかなくてつまらないものだけれど、それで暫く我慢してね。安物ではないみたいだよ」


裂かれた僕の服って…。


青い…ティアラ姫?


要らない要らない、あんな服!!


あれは芹霞が好きだと言うから…


そうだ――



「芹霞は!!!?」



僕の傍には芹霞が居ない。

僕の記憶では、久遠と再会したのが最後で。



「大丈夫。元気でぴんぴんしてるよ。今、師匠の薬、久遠と取りに行ってる」


「要らないよ、そんなもの…。僕は…」


薬よりも芹霞が必要で。


起き上がって迎えに行こうとした時、由香ちゃんに止められた。


「師匠。無理。それじゃなくても"約束の地(カナン)"は異常事態。此処は久遠にまかせて、師匠は此処で安静」


「……だけど…」


「久遠は…神崎には手を出さないよ」


見透かしたように、由香ちゃんが言う。