「そう…だね。クマ、玲くんの薬を先に探してるよ。そうだ、5分後に迎えに来るね!!! 何かあったら、大声上げるんだよ!!?」
『ちょ…嬢ちゃん!!? あと5分で……』
「待っててね!!!」
そうしている間も、あたしとクマの距離は離れて。
情け容赦ない、ふさふさの王様。
ふさふさ…。
ふさふさ…。
久遠はクマに答えるでもなく、ただ無言でヘリを降りていく。
ふさふさ…。
ふさふさ…。
薬を探そうとする様子もなく、久遠はヘリから遠のくように歩く。
あたしは鏡の光で久遠を照らしながら、久遠に聞いた。
「ねえ…久遠。お薬を…」
「………」
「久遠ってば!!!」
「……せり。
寝てる紫堂玲を起こす」
突如、堅い顔をした久遠が、そう言った。
「玲くんは寝かせてあげ「至急確認したいことがある」
瑠璃から紅紫色に戻った瞳の色。
「じゃ早く薬見つけてクマと…」
「せり。
あの男を――
信用するな」
「へ?」
「言葉が矛盾している」
あたしは何度も瞬きをした。

