シンデレラに玻璃の星冠をⅡ


『今? 音楽から切り離した"特定の音"を、0と1の信号に今変換中なんだ、この機械で。いつでも切り札として携帯できるように、媒体に複製(コピー)するつもりだ』


ふて腐れ顔の王子が睨み付けている先は、ピカピカ早い速度で点滅している小型の機械。


そこに刺さっているのは、"USBメモリ"という奴だろう。


32MBと書かれている。


よく玲くんが色々な形のものを持ち歩いていて、そこにプログラムを保存したり、呼び出していたりしている。


「………」


それを見て、久遠は更に考え込んでしまった。


メモリを知らないんだろうか。


「ねえ、ヘリの中の機械って、音の分離作業が出来る音響設備が整っているものなの?」


ふと、浮かんだ疑問を口にすれば、


『いや…このヘリは特殊仕様だ。何でも一通り揃っている、魔法みたいなヘリだ』


まあ…青い魔法使いのヘリなら、不思議ではないんだろうけれど。


「ねえねえ、クマ。作業は結構かかるの?」


『あと5分ってとこかなあ。…形式変換やデータ圧縮までは出来ないみたいだから…そのままで複製するのに時間がかかっちまってる』


王子がメモリを睨み付けてそうぼやくと、


「……では、オレ達は行く」


久遠が、突き放すように言った。


「くお…え? え?」


あたしをまたひょいと肩に担いで、王子に背を向けて歩き出したんだ。


『あ? え?』


王子からもあたしと同様な戸惑いの声が上がる。


「久遠、どうして? 作業終わるの待ってからクマも一緒に行こうよ!! 5分なんてあっという間だよ!!?」


「5分は長い」


5分が待てないのか、久遠は!!


あたしはじたばた暴れた。

しかし、あたしを支える手はびくともしない。


「紫堂玲の薬を探さないといけないだろ? せりは、ただ喋って5分の時間を費やすのか?

紫堂玲が今、苦しんでいるかもしれないのに?」


ぴたり。

あたしは動きをやめた。