笑い声が止らない中、
「1つ聞く。その音楽が蝶を呼ぶ危険性があることを判っていて、何で鳴り響かせた?」
クラウン王子に向ける久遠の瞳は、何処までも冷たい瑠璃色。
ふさふさ王VSクラウン王子。
挟まれているあたしは、どちらを応援すべきか。
「どう考えても――
蝶を呼び寄せていたとしか考えられない」
まだ…戒心しているのか。
いつでもやる気なく、執着心が異常過ぎる程薄い癖に、しかもあたしがクマは大丈夫だって今までの状況説明までしたのに、警戒心だけは執拗に残っているらしい。
今にも白いふさふさが逆毛だってきそうな、剣呑たる空気を纏っている。
『ああ、それか。嬢ちゃんならAPEXのBGMとして、白き稲妻と聞いていたと思うが…あの曲からある周波数を持つ特定の機械音を取り除けば、世間一般の…害のないただの音楽になることは証明済み。
外に流していたのはそうした安全な曲だ。取り除いたものを順に流していただけの話。だから蝶はこの付近に寄りついてもこなかったろう?』
まるで何でもないというかのように、ぶちゃいく王子は朗らかに返した。
「………」
久遠は黙ったまま、瑠璃色の瞳を更に細めて王子を見ている。
まだ納得出来ないのか。
「久遠。それはナイスアイデアだと思うよ。玲くん曰く、何でもその特定音は"虚数"っていう…電脳世界の0と1以外のもので出来ているものらしいんだけれど、それを金に当てれば爆発するんだよ。宝石屋さんから金を片っ端から集めて、そこにクマが集めた虚数を当てれば、どんな敵がきても心強いと思わない?」
得意満面で、クマの擁護をしたのだけれど、
「……金?」
久遠は益々警戒を強めてしまったようで、何やら色々考える処があるらしい。
「…今は、何をしてる」
久遠が腕組みをすると、白い毛がふさふさ揺れた。
訊き方もまるで尋問だ。
どうも王様は、クマ王子をお気に召さないらしい。

