シンデレラに玻璃の星冠をⅡ

 
『奇跡的に木の上に落ちて助かった俺が、嬢ちゃん達探してふらふら歩いてたら蛆と蚕だの気味悪い処に出てしまって。ぎゃあぎゃあ騒いでいた俺に、この"浄化"の布を被れば安全だから大丈夫って渡してくれて、ヘリの方向を指差してくれたんだ』


「その子が…あたしに似ていたの?」


『ちょっと見だけだったから確証はないけれど、黒髪や声とか…嬢ちゃんぽかったんだけれどな。だけどまあ、考えてみれば、嬢ちゃんならもっとリアクション激しくてもいいし、去って行かないよな』


あたしの偽物…?


『危険な場所でうろうろしていても埒あかないし、ヘリの所に居れば嬢ちゃんか白き稲妻かに合流できるかと思ってヘリに向かったら…床にCDが落ちててさ』


クマ男が指したのは、一枚のCDジャケット。


「Zodiac…ドラゴンヘッド…」


『APEXでこの中から特定音を取り出して、爆発要素になれるのなら…それが武器にならないかと、機械を使って取り出していたんだ』


そして反対の手には、金色の万年筆。


「純金…?」


久遠は目を細めて、それを見ていた。


「ま、とりあえずは…クマはクマなりに、対処方法を考えてくれてたらしいよ、久遠。だからいい加減警戒やめてよ。クマはいい奴だから。

だけどクマ、よかったね。何で王子になっていれば安全なのか理屈判らないし、あたしの偽者っていうのも何で沸いて出たのか判らないけれど」


あたしは、S.S.Aで…玲くんとゲーム大会に居たという偽物を思い出していた。


もしかして…出没しているんだろうか、"約束の地(カナン)"でも。


「せりに似た…女がクラウン王子の布…」


思案中の久遠の瞳に鋭い光が走っていた。


「"浄化"って判っているということは…布は本物? じゃあ…蝶を押し込めている場所は、解放されてしまったのか!!?」


途端に険しい顔つきになった久遠は、すたすたとクラウン王子に近寄り、その身体に触れた。


「本物、か…」


何かを感じるのだろうか。


ふかふかな王子様とふさふさな王様。


たまらない。

たまらない。



「王子~ぎゅう~ッッッ「ふかふかよりふさふさだろ!!?」


だから何で邪魔する久遠!!!


「ぎゅうさせて、ぎゅう!!!」


「せり、クマなんだろ!!? クマに抱きつくのならオレにしろよ、オレはふさふさなんだぞ!!?」


「じゃあ久遠にぎゅ「よせ、本当にするなよせり!!! 君は子供か!!?」


「自分が言ったんでしょ、何でそんなに嫌うのよ!!!」


「だから君が嫌いだって何度も何度も…」



『がはははははは!!!!

こりゃあ…白き稲妻も手こずるわけだ!!!』



豪快なクラウン王子は、身体を反り返って笑い続けた。