風の音が、鬼哭啾々とした響きを奏でる。
暗闇に豹柄の久涅。
攻撃に転じることを躊躇する俺は…肉食獣に魅入られた獲物か。
気を抜けない緊張感が俺の身体に走る。
聞きたいことは山にある。
殴り飛ばしたい衝動は大きい。
しかし…
「なあ…凜」
不意にかけられたその声に。
「血とは…なんだろうな」
俺は…思わず目を細めた。
「心とは…何処にあるのだろう?」
それは…久涅らしくもない、弱さを秘めて。
「何を持てば、本当の自分だと…証明出来るのだろう」
突然何だ?
空を仰ぎ見るその様は、孤独の色に覆われているようで。
「どうすれば…否定されなくなるだろう?」
俺は…
ただ久涅を見ているしか出来なくて。
「欲しいんだ」
まるで泣くようなその声に。
――芹霞ちゃあああん!!!
俺は8年前の俺を思い出してしまう。
「凜、頼む」
まるで似つかわしくない懇願の先にあった言葉は、
「その手首の…俺にくれ」
芹霞の…布?
「お前が持ち主ではないのなら、それに込められた心なんて判るはずもない。俺は、欲しいんだ、それを」
血色の薔薇の痣(ブラッディローズ)は闇色に隠れ、冷たい風に靡く芹霞の布。
風に吹かれてひらひらと…
それは熱い想いだけを煽って。
どうして…芹霞だ?
どうして?
「お前が持つには…相応しくない」
俺は――
首を横に振る。

