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「どういうつもりだ、貴様!!!」
紫堂本家に舞い戻った僕は、廊下を憤然とした面持ちで歩いていた久涅に、怒鳴りつけた。
形振り構っていられない。
僕の心は追い込まれていたんだ。
「あの男を…周涅を使ってまで、そこまで"次期当主"が欲しいか!!!」
櫂を追い詰めるにいいだけ追い詰めて、本当はそんな肩書き要らなかったと笑った久涅を、僕は絶対忘れない。
結局、この男が権威を欲しているだけのこと。
久涅の出現のせいで、僕達はばらばらになってしまっている。
櫂は!!!
芹霞は!!!
――紫堂櫂を愛している!!!
「僕は…結婚などする気もない!!! ましてや、芹霞を"影"になどする気もない!!!」
「やつあたりか、玲。お前は芹霞の心を奪えなかった。だから身に起きた境遇の全てを…俺のせいにするというのか。櫂の代わりに」
冷ややかな顔。
櫂に言われているような気がした。
「お前は、負犬だ」
――紫堂櫂を愛している!!!
何も…
何も知らない癖に!!!
「お前に…僕の何が判る!!!」
行き場のない怒りが込み上げてきた。
結婚。
"影"。
絶対嫌だ。
そんなことをするくらいなら、直ぐにでもこんな肩書き、投げ捨ててやりたい。
だけど…
そしたら芹霞はどうなる?
櫂はどうなる?
そう、これは――
僕だけの問題じゃないんだ。

