「雨は、全てを洗い流してくれるから。汚いことも、嫌なことも、辛いことも。だから、泣くことは悪いことじゃない。泣いていいんだ」
涙が溢れそうになるのを、やっぱり堪えてしまって。
無理矢理、笑う。
「…ふふ。詩人みたい」
「こう見えても文学の勉強してるから。言葉は好きだよ。オレの言葉が…君に届けばいいって思う」
「……」
十分だよ。
届いてるどころじゃない。
響いてる。
……泣きそうなくらい。
「その無言に込められた言葉は…届いてる、って思ってもいいのかな」
彼の手が私に伸びてくる。
頭にポンと乗る。
それを合図に、私はぽつりと呟くように言葉を紡いだ。
「……本当に……」

