でも、このまま別れても、これからの生活に変わりはなくて。
こんな雨の日があったよね、って思い出すくらい。
きっと、そんなもの。
「…………じゃあ、私帰ります」
笑顔を彼に向ける。
…作り笑顔を。
その笑顔を、彼はじっと見つめる。
「…お礼、させてくれない?さっきのチョコの」
「……」
その言葉に、もしかしたら彼も別れがたいって思ってくれてるのかな、って自惚れた。
でも、私はゆっくりと首を横に振った。
気持ちだけで十分。
「…そうだな…じゃあさ、次逢えたらお礼させて?」
…そんな日、来ないよ。
私は明日遠くにいってしまうんだし。
そうじゃなくても、約束もなしに、そんなに簡単に逢えるはずない。
きっと、それは彼にもわかっていて、ほんの少しの可能性を信じて言ってくれてるんだと思う。
私も、その可能性があると信じたいと思った。
だから。
「……はい」
今できる限りの笑顔で応えた。

