ちゃぷっと足を入れる。冷たくて気持ちいい…… 太陽が私達を照らす


「チャコって1人っ子っぽいよね」


渉君は足で川の水を遊びながら思い出したように呟いた


1人っ子なのは正解


「正解だよ渉君は兄弟いる?」


私も渉君を真似て足で川の水を遊ぶ
渉君は動かしていた足を止めた


「いるよ、兄ちゃんと弟が」

少し寂しそうな顔をするのはなぜだろうか


「名前は?」


「弟が歩(アユム)」


弟君の名前しか教えてくれなかった
歩君とはあることがきっかけで口を聞かなくなったらしい


兄弟って大変なのかな


「渉君、帰ろう」


陽もオレンジいろに染まってきていた。
私は川から出ようとしたとき足がなにかにひっかかった


「いったぁ」


膝から血が流れていた。足を見ると、鎖のついた時計が引っかかっていた

「チャコ大丈夫か?」


パタパタと渉君は近づいくる。私は時計を開けた

「大丈夫だよ、でもこの時計……」


「ずいぶん古い時計だね」


ポタポタと雫の落ちる時計は確かに古かった
でも時計の針は正常に動いていた


「さびてない針?」


私の言葉に渉君は時計の針を動かした
……え?


「チャコ……この時計」

渉君と私はきっと頭の中は同じ
だって拾った時計の針を動かしたら


オレンジいろの陽がまったくいなかった
まるで最初から無かったみたいに


私達は人影に目を向けた 。あれは……


「チャコ!こっち」


渉君に腕をグイッと引っ張られる
物陰に隠れて様子をみていると


あれはやっぱり私達だった


「この時計、時間を自由に操れるみたいだな」


「じゃあ一回もとの時間に戻して」


渉君は時計の針を動かした。オレンジいろの陽が私達を照らす


「これ本物……」

渉君は時計をマジマジと観察する。


「この時計どうする?」

この時計は届け出を出した方がいいのか
でも、川で拾ったなんて少し怪しいし


「この時計、チャコが持ってて?拾ったのチャコだからちょっと協力してほしいことがあるんだ」

「協力してほしいことって?」


渉君は慌てて帰る準備を始めた。この時計を何に使おうと考えてるのか


「それは明日。ちゃんと明日時計持ってきて」


補習……明日もあるんだった。
そうだ、明日も信平のところ行ってみよう