くいっと体が後ろに引っ張られる。渉君は凄く怒っていた

「危ないだろっ!けがしたらどうするんだよ」


私は渉君の腕の中にいた。離してほしいのに渉君は私をギュッと抱きしめていて離さない


「ごめんなさい……」


私は俯きながら渉君にされるがまま。
渉君の抱きしめる腕はやっぱり男の子だった


「怪我がなかったから良いけど次はきをつけて」

渉君の口調はいつもの優しい口調に戻った。
でも私はまだ腕の中から解放されていない


「渉君、ちょっと立ちずらいかなー……何て」


へへっ と笑う私を顔を赤くしてパッと離した

「わりぃ」


「ううん、それで……お兄ちゃんのところにいこう」


渉君の反応にコッチまで恥ずかしくなってしまう。抱きしめていたことを忘れてたみたいな反応で

「あ、家のちょっといったところ」


渉君は少し前を歩く。後ろ姿は何か切なかった。 私は駆け寄って隣を歩く

ちょっといったところで何があるのか。
時計を回した朝は山背が冷たかった


「あ、ちょっと」


いきなり止まった渉君に少し歩いた私をクンッと引っ張られた。


「ここ?……」

渉君は静かに頷く
緩いカーブの道路。
短いガードれるが切れ切れに続いていた


消えかかった横断歩道に小さな信号がちょんとたっていた


2010年6月19日
天気:雨、時刻10時10分


ポツポツと雨が降り続いている
渉君はチラッと時計を見た


「もうすぐ、兄ちゃんと俺と歩が出てくるんだ」

私は物陰から息をのんで渉君が教えてくれた家を見つめていた


「あ……」


渉君の家から3人傘をさして出てきた。
見える後ろ姿は仲のいい兄弟


「行こう」


私達は目の前の渉君達を尾行した。渉が隣にもいるから少し変な気分だ


「あ!やべぇ転がってった!」


歩君と信平の間で財布を広げている渉君はバラバラと小銭が転がっていった方に歩き出した


「あの時、お金なんて確認してなかったら今兄ちゃんは……」


隣の渉君は口をつぐんだ 小銭を黙々と拾う渉君は道路に体をずらした


キィイッと車のブレーキ音が響く
渉君に向かって車が……

「渉っ!」


ドンっと鈍い音がした。信平に突き飛ばされた渉君はゆっくりと起き上がって目を見開く

信平が血を流して横たわっていた。青ざめた顔で男の運転手が降りてくる