ガラステーブルに顎を置いて携帯を眺めながら暫く待つと、プツリと機械音が止んで起き抜けからテンション高めの彼女が力一杯寝室のドアを開いて叫んだ。

「寒いっ!」

寒みぃんだったらズボン履けよ。

そうツッコむ間も与えられず、駆け寄って来た彼女がソファーを背凭れにして温風に当たっている俺の腕の中へと飛び込んで来た。それはそれで可愛らしいのだけれど、朝から露出は避けて欲しい。

「パンツ丸見え」
「うぅ…寒い」
「何でズボン履いてこねぇの?バカじゃん」
「だって…呼んでるから行かなきゃと思って」
「バーカ」

足を上着の中へすっぽりと収納してコンパクトになった彼女をファンヒーターの前に座らせ、勇気ある俺は瞬間冷凍機並みの寒さの漂う寝室へと戻ってベッドサイドに投げ捨てられたままのズボンを拾い上げてリビングへと足を急がせた。

「ほれ」
「ありがと」

ついでにコーヒーでも淹れてやるか…とキッチンに立ち、唸るコーヒーメーカーの前で同じように唸った。


結局俺が淹れるのかよ!


やはり気温の変化のせいだろうか。俺に対する仕打ちが酷過ぎる気がする。地球温暖化なんて言ってるけど、ホントは寒冷化の間違いじゃねぇの?なんて独り言も弾む。

「ほれ、コーヒー」
「…紅茶が良かった」
「我儘言うな。てか、早くズボン履け」

折角渡してやったズボンを両手で握り締め、ダルマ状態のままの彼女は再びゆっくりと船を漕ぎ始めた。