だけどね、思っちゃうじゃない？可哀想だって。

「ねぇ、あんたもうちょっと愛想良く出来ないの？」
「何で？」
「ファンだって言ってくれてんじゃん。応援してるって」
「そんなの皆言うよ。ってか、ウザイよアンタ。学校で声掛けないで」

不機嫌な２人に挟まれて、あたしにどうしろと言うのでしょうか。無視？それともフォロー？こんな時「優しさ」という面倒な感情で動いてしまえば、後で絶対に痛い目を見る。それは十分に知っていたのだけれど。

「言いすぎよ、あんた。可哀想じゃない」
「は？何言ってんの」
「いや、疲れてんのはよくわかるのよ。でももうちょっと何て言うか…」
「優しく接してやれって？」
「そうそう。わかってんなら実践しなさい」
「ヤダ。プライベートまで愛想振り撒いてられないっての。それに、ダメっつぅじゃん」

ホントにこう…何て言うか…バカ？

呆れて言葉が出ないとは正にこのこと。ここまで彼女バカだとは…知ってたけど。
どうにもこうにも遣る瀬無い。

「もう行こうよ。俺終わってからまた仕事だし」
「あぁ…ハイハイ」
「ったく、つまんない奴のせいで睡眠時間減っちゃったよ」
「あんたホント最低だね。毎度のことながら感心するよ」
「あっ、もう俺に話しかけないでね。俺ちゃんとこんなにカワイー彼女いるから」

グイッとあたしの顔を両手で挟み、その子の方へ向けておバカな大将はにっこりと微笑む。またか…と、がっくりと項垂れるあたしの肩を抱き、何故かご機嫌に足はカフェへと進められた。

毎回思うのだけれど、そこの説明の省略だけは出来れば避けて欲しい。あと、語尾にハートマークを付けながらあたしを紹介するのも。

コイツの彼女はあたしではなく双子の妹の優希、通称「ユキ」の方なのだ。顔は似ているけれどそれだけは間違いない。ちゃんとそれを説明してくれなければ、あたしの命はそろそろ危ないかもしれないというのに。


「ホント…面倒くさい」
　

これがここ最近のあたしの口癖になっていた。