「あぁ、蛍光灯変えたよ」
「あっ、そっか。それだ」
グラスを両手に持って運んで来た美佳が、くいっと首で上を指す。以前は、それこそ教室の蛍光灯に照らされているくらいこの部屋は明るかった。眩しいから変えてほしいと頼んだのは、確か泊まりに出る前だった気がする。
「もう変えてくれたんだ」
「ん。シンが出張から帰って来た時にゆっくり出来るようにと思ってね」
「さっすが美佳。あっ…うまー!美佳サイコー!」
どうしても待ち切れなくてオムライスを口に運んでいた俺は、久々の味に目を輝かせた。本当に、出来た彼女だと思う。片付けも掃除もきちんと出来るし、料理だって上手い。お嫁にもらうには最適だ。と、前に母さんが言ってたことを思い出した。
一緒に暮らすにあたって親が出した条件が、美佳をきちんと紹介すること。そんなのお安い御用だ!と翌日には家に連れて行き、数時間後にはもう承諾をもらった。
結婚を前提に…なんて大それたことは言っていないけれど、親も、勿論俺もそのつもりで。事務所の許可も得て公表もしていることだし、あとはタイミング待ち。そんな状態だった。
「いただきますした?」
「ん?いただいてまーす」
「はい、どうぞ。美味しい?」
「んー!最高。やっぱ美佳のご飯が1番上手い」
オムライスを口いっぱいに頬張る俺を見ながら、向かい合わせに座った美佳が何か言葉を飲み込んだ。
普段は気付かないようなちょっとした仕草なのかもしれないけれど、こうして向かい合っているとよくわかる。唇に指を当ててじっと俺が動かすスプーンを眺めていた美佳は、ため息をつく代わりに何度か瞬きをして黄色と茶色のコントラストを自分の口へと運んだ。
「何?」
「ん?」
「今何か言おうとしたっしょ?」
「あー…」
隠し事は良くない。と少し身を乗り出した俺に苦笑いを零し、口の端に付いたソースをペロリと舌で舐めとって目を逸らした。スプーンでソースを弄りながら、少し遠慮気味に独特のハスキーボイスが聞こえる。
「お弁当、前みたいに作ってあげようか?」
一時期あまりの忙しさで食欲が激減した俺のために、とてつもなく早起きをして美佳がお弁当を作ってくれていた時期があった。どの仕事場へ行くにもそのお弁当と水筒に入ったスープを持参して、1日1食で何とか食い繋いでいたというあの悪夢。
今思い出せば笑い話にもなるけれど、あの頃は本当に辛かった。
「あっ、そっか。それだ」
グラスを両手に持って運んで来た美佳が、くいっと首で上を指す。以前は、それこそ教室の蛍光灯に照らされているくらいこの部屋は明るかった。眩しいから変えてほしいと頼んだのは、確か泊まりに出る前だった気がする。
「もう変えてくれたんだ」
「ん。シンが出張から帰って来た時にゆっくり出来るようにと思ってね」
「さっすが美佳。あっ…うまー!美佳サイコー!」
どうしても待ち切れなくてオムライスを口に運んでいた俺は、久々の味に目を輝かせた。本当に、出来た彼女だと思う。片付けも掃除もきちんと出来るし、料理だって上手い。お嫁にもらうには最適だ。と、前に母さんが言ってたことを思い出した。
一緒に暮らすにあたって親が出した条件が、美佳をきちんと紹介すること。そんなのお安い御用だ!と翌日には家に連れて行き、数時間後にはもう承諾をもらった。
結婚を前提に…なんて大それたことは言っていないけれど、親も、勿論俺もそのつもりで。事務所の許可も得て公表もしていることだし、あとはタイミング待ち。そんな状態だった。
「いただきますした?」
「ん?いただいてまーす」
「はい、どうぞ。美味しい?」
「んー!最高。やっぱ美佳のご飯が1番上手い」
オムライスを口いっぱいに頬張る俺を見ながら、向かい合わせに座った美佳が何か言葉を飲み込んだ。
普段は気付かないようなちょっとした仕草なのかもしれないけれど、こうして向かい合っているとよくわかる。唇に指を当ててじっと俺が動かすスプーンを眺めていた美佳は、ため息をつく代わりに何度か瞬きをして黄色と茶色のコントラストを自分の口へと運んだ。
「何?」
「ん?」
「今何か言おうとしたっしょ?」
「あー…」
隠し事は良くない。と少し身を乗り出した俺に苦笑いを零し、口の端に付いたソースをペロリと舌で舐めとって目を逸らした。スプーンでソースを弄りながら、少し遠慮気味に独特のハスキーボイスが聞こえる。
「お弁当、前みたいに作ってあげようか?」
一時期あまりの忙しさで食欲が激減した俺のために、とてつもなく早起きをして美佳がお弁当を作ってくれていた時期があった。どの仕事場へ行くにもそのお弁当と水筒に入ったスープを持参して、1日1食で何とか食い繋いでいたというあの悪夢。
今思い出せば笑い話にもなるけれど、あの頃は本当に辛かった。

