逃げ出した女の子達の後姿に手を振ってると、優奈がスッゲー怖い声で話し掛けてくる。

「あんた…何してんの?」
「スケジュールが急に変更になって早く終わってさ。せっかくだから優奈迎えに来ようと思って」
「そんな暇あるなら授業受けなさいよ。今日珍しく出席取ってる授業もあったのに」
「げっ…。でも、授業には間に合わない時間だったから」
「あぁ、そう」

まるで何事も無かったかのようにその場を去ろうとする優奈に首を傾げる。これが優希なら、間違い無く俺に泣き付いてきてるだろう。まぁ、優希はそこがカワイーんだけど。

「さっきさ、何か困ってたみたいだったけど?」
「あぁ…もう慣れたから」

わざとらしく訊いた俺に、優奈は少し呆れたような笑顔で答えた。この事、またサキには黙ってんだろーな。なんて思ったら、そんな健気な優奈がとても愛おしく思えて。

「何?」
「大好き、優奈」
「ホント…面倒くさい」

肩を抱いた俺を心底嫌そうな顔で見上げ、優奈はいつもの口癖を。そんな嫌そうな顔されたらちょっと傷付くんですけどっ!なんて言えるはずも無く、助手席に乗り込む優奈を見届けて運転席へと回った。

「たまにはさ、デートしない?」
「嫌だ」
「ホントつれない…ってか冷たいよね、優奈って」
「今度和也と休みが合った時にまとめて遊んであげる」

優希もいっつも言ってるけど、優奈の世界はサキを中心に回ってるんじゃないか?ってそう思う。優希みたいに休みまで俺と合わせたりとかはしないんだけど、何て言うか…そう、思考が全部サキ中心。自己中って言うよりも、サキ中?そんな感じ。

俺だって一応人気アイドルなのにね。