薬師 ―君の傷―




本当にどうしたらいいか分からなかった。


「母さん……」


いなくなれ、と願った相手がそのとおりになりそうになってみて、初めて気が付くことがあった。


それはあたしの場合、“やっぱり何があってもあたしの母親だ”だった。


どんなに嫌いだと思っていても、心の奥では大好きなのだ。


嫌いになんかなれない。


そう思った時、あたしに声がかかった。


「安藤さんですか?」


弱々しい男の人の声がして、顔を見れば若くて、弱そうな顔をしたメガネの医者と思われる人だった。


「お母さんの担当をしています、岡崎といいます」


こんな弱そうな人が……。


「お話がありますので、こちらへ……」


弱そうな岡崎先生の眉が下がった。


――あー、この人うそつけない人だ


今から聞く話がいい話ではないのは明らかだった。


「……はい」


いい話でも悪い話でも、あたしに“聞かない”という選択肢はないのだから。