薬師 ―君の傷―




普通に入った玄関。


すぐに異変に気が付いた。


「電気がついてる……」


この時間は母は出勤しているはずだ。


電気がついているはずがない。



おかしいな、と思いながらも消し忘れかと思い直したあたしは、それでも足音をなるべくたてないで廊下を歩いた。




母さんがいたらやだなー


そう思ってリビングをのぞいたあたしは絶句した。


「え……?かあ、さん?」


はじめは寝ているだけかと思った。


でもそれはあきらかにおかしかった。


苦しそうな息、そして血色の悪い肌。額に浮かんでいるのは尋常じゃない量の汗。


急いで駆け寄り、額に手を当てるとものすごく熱い。


「……え、救急車、」


なかばパニックになりながらも、あたしはすぐに救急車を呼んだ。


あれだけ嫌いだったはずなのに、いざいなくなりそうになるとどうしようもない不安にかられた。


救急車の中、思うのは“どうしようどうしよう”ばかりだった。