「……姉さん?篤郎さん?」

 今度は恐る恐る呼んで見る。

 と、玄関扉のスリ硝子に、こちらへ向かって来る人影が透けて見えた。

 留守ではなかったのだ。

 戸が勢いよく開けられるのとほとんど同時に、私は物凄い力で腕を捕まれ、引きずり込まれていた。

 咄嗟に悲鳴をあげなかったのが不思議なくらいだった。

「朝子……!」

 それは義兄、篤郎だった。

「篤郎さ、ん……?」

 体が軋むほどに抱き締められ、何がなんだか分からない。

「俺がすまなかった、帰ってきてくれたんだな、朝子、朝子……」