最初から何もかも歪んでいるのだ。

 いつか必ず破綻が訪れるだろうと感じながら、私と篤郎は偽りだらけの生活を続けた。

 ある時、私は電話台を掃除しようと思い立ち、雑巾を手にまず電話機をどけた。

 思ったよりも埃は積もっていない。

「…………」

 電話機の下には、前に陽子が朝子にどこかに行った土産として贈った敷き布がおいてあった。

 サーモンピンクのその布に、どす黒い染みが付いている。

 それが何であり、いつ付いたのか、考えるまでもなかった。