家賃は引き落としになっているから、銀行口座が空になるまでは、きっと誰も異変に気がつかない。

「朝子、そばにいてくれ」

 私を姉だと思い込んで懇願する男は、もはや恐怖の対象でも憎悪の的でもなく、憐れむしかない存在に思われた。

 私は男を憐れみ、蔑んだ。

 また、篤郎は最初の一度を除いて、私と交わろうとはしなかった。

 裸になり、体を探れば、いくら私の顔が姉に似ているとは言っても別人であると言う違和感が拭えないからだろう。

 半年余り、私は朝子として家事をし、篤郎の世話をした。