義兄は私を一番奥の和室へ引き倒すと、服を引き千切るように脱がし、暴力的に辱めた。

「朝子、朝子……」

 執拗なまでに繰り返される名前は、まるで私に呪いを掛けているようだった。

 その日から、私は朝子の亡霊になった。

 一室に閉じ込められ、乱暴され、篤郎と同じように私も少しずつ狂って行ったに違いない。

 逃げる気力も、警察に通報する意欲も起こらなかった。

 陽子は誰にも探されることなく、消えた。

 仕事の方はちょうど一段落したところで、年中ひとところにじっとしていないフリーライターを探すような人間はいなかった。