━━Ⅲ━━ それから10分ほど経った頃。 広間のドアが開いて、お盆を抱えた浮夫が戻ってきた。 テーブルに置かれたのは、ビールやアイスティー、オレンジジュースなどだったが、ひとつだけ湯気の立つココアがあった。 「誰だ。このくそ暑いときにホット頼んだやつは」 「あっ、ワッ、ワタシです……ごめんなさい。少しお腹壊してて……アイスはちょっと……」 「奥さんか。腹痛じゃ仕方ねぇな。はっはっ」