ここで、香苗がまたも手を挙げた。 「ワタシ、残りたいんですけど……その……死体……もう見たくないので……」 「そうですか。それなら――」 「わたしが行きます」 いち早く名乗りをあげたのは、母親の真紀子だ。 「でも、せんせ……あ、いや、桜庭さんは匠くんを……」 「今は誰がそばにいても、助けてやれないと思いますし。心が壊れてしまっているみたいだから……」