「持ってきて欲しいものはあるんですけど……そうじゃなくて……その……」 「なんです?」 「もし他殺だとしたら……えっと……犯人がこの中にいるかもしれないん……ですよね?」 犯人という単語に反応して、匠はゆらゆらと視線を香苗に向けた。 彼女は、しきりに手の匂いをかぎながら、両手でこするような仕草をして落ち着かない様子だった。 「何がおっしゃりたいんです?もしかして、ぼくが犯人で現場に証拠が残ってるから消しに行こうとしてる……とか?」