「ん?なんだって?」 パッと指を離す姫子に、繰り返す元気もなくなった匠は「なんでもないよ」とため息をついた。 彼女の悪癖なのだと、この1泊2日の間はあきらめるしかないのかもしれない。 「それはそうと、坊主」 匠のため息をが空気に溶けたとき、宗がふと声をかけた。 「ん?何?」 宗は、痛そうに曲げている右足へと視線を落としながら、ぽつりとつぶやく。 「運がいいな」