何かの前兆だろうかと不愉快に思いつつ、ベッドからおりてそばのブラインドを開く。


陽射しが、通勤ラッシュの乗客みたいに一斉に押し寄せてくる。


匠はぎゅっと目を閉じた。



「……ったく。人の気も知らないで」



心とは真逆の空模様に八つ当たりしながら、ブラインドの取っ手を乱暴に絞る。


登校の準備のために部屋を出た匠は、自分がまだ「あのときの事件」を記憶の引き出しに仕舞えていないことを、あらためて痛感していた――。





。● What is this mysterious taste?