「まったく。すぐ転ぶ癖はやっぱり直ってないじゃない」 額を指で弾かれ、匠は「痛っ!」と声をあげた。 「ケガ人に暴力なんて。虐待だ!」 「はいはい。これだけ元気があれば、頭も大丈夫。ね?佐伯さん」 笑顔を向け、真紀子がおどけたように片眉を上げる。 緊張の漂う空気が溶けたおかげか、姫子もようやく安堵の表情を作った。 「は、はいっ!」