━━Ⅲ━━ 「ダメだよ。念のため病院へ行こう」 「嫌だ!行かない!」 「気持ちは分かるけど……ほら、頭を打ってたらいけないだろう?」 「打ってない!手でちゃんとおさえてたし」 2階の客室のベッドの上で、匠は編集者の浮夫と言い争っていた。 数段とはいえ、階段から落下したのだから病院で検査をというのは正論で、匠の反論は駄々でしかない。 しかし、一歩も引かない。 匠がこうも頑ななのは、別の理由があるからだ。