「匠……」 「問題C出してくれる約束……守ってくれてありがとうって。世界一面白い問題……ありがとうって。ずっと付き合ってくれて……ありがとうって」 鼻を啜っても啜っても治まらず、喋るたび咳に似た熱い息が声に混ざる。 「メモ紙見たとき一回逃げて……ごめんなさいって。すぐに解けなくて……ごめんなさいって。あと――」 「もういいっ!もういいから……!連れてくから!」 身体が急に締め付けられた。 嗅ぎ慣れた匂いは、母親の真紀子のものだった。