「……じゃ、じゃあアタシ……なんのために……」 「そうだよ。お姉ちゃんを殺さなくってもよかった。殺さな、くて……」 自分の胸ぐらを掴むように、匠はシャツごと握りしめた。 勝手に仲がいいと思い込み、たったそれだけのことで田中は人を刺し殺め、挙句の果てに証拠隠滅として切り刻もうとしていたのだ。 軽はずみにも程がある。 「勘違いによる発作的な殺人、やるせないな……」 煙を吐き出し、宗は短くなった煙草を、脇に置いていた灰皿ですり潰した。