「ガキじゃないって。匠って名前があるんだってば。いい加減覚えてよ」 言い返していると、突沸していた怒りが、少しずつしぼんで落ち着くのを感じた。 凄惨な殺人事件にして、深刻になりすぎないのも、あるいは宗ののらりくらりとした口調や人柄によるものかもしれない。 「ハイハイ、ワルウゴザンシタ。タクミドノ」 ――いい人か、悪い人か、分かんない人だなあ。 匠が首をひねる中、引きずられるように田中が元の席に座らされた。